インドは水の安全性が問題
インドは世界で二番目に人口が多く経済も成長しています。その為、水の消費も膨大です。
しかし水資源に限りがあり、インフラも整っていないのでインドは多くの問題を抱えています。アジア開発銀行が制定した水の安全指数に拠れば、インドは他のアジアの国々に比べて全体のスコアは1.6(1が最低で最高は5)と低位にあります。指数は5つの要素を勘案して作成されますが、5つのうちインドは家庭用上水の安全性、都市の水の安全性、水の安全性に関する環境について問題に直面しています。
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家庭用上・下水道の衛生管理及び全て地域内の公衆衛生の要件を満たしていない。
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都市部の水水道、下水処理、廃水などの関連サービスが低レベル。
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川の流域は不衛生。
本稿では廃水処理についてのみに焦点を当てます。
表1.インド及びアジア各地域の水の安全指数(最低:1点、最高5点) |
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得 点 |
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地域 |
インド |
中央及び西アジア |
東アジア |
太平洋地域 |
南アジア |
東南アジア |
先進国 |
家庭用上水の安全性 |
1.0 |
2.3 |
3.0 |
1.5 |
1.0 |
2.4 |
5.0 |
廉価な水の安全性 |
3.0 |
3.0 |
4.0 |
3.5 |
3.1 |
3.3 |
3.6 |
都市の水の安全性 |
1.0 |
1.6 |
2.0 |
1.8 |
1.0 |
1.6 |
2.9 |
環境水の安全性 |
1.0 |
1.9 |
2.0 |
3.5 |
1.0 |
2.4 |
2.3 |
水関連災害への予防体制 |
2.0 |
2.0 |
2.0 |
1.8 |
1.8 |
1.9 |
2.9 |
国の水安全指数 |
1.6 |
2.2 |
2.6 |
2.4 |
1.6 |
2.3 |
3.3 |
出典・「アジアの水事情」アジア開発銀行 |
廃水の発生と廃水処理能力とのギャップ
2000年代には、廃水の発生量が2003~2004年の1日26,254百万リットルから年率(複利)で7.69%増加し、2011~2012年には1日47,459百万リットルへと増加しました。しかし、廃水の処理能力は年率(複利)で10.85%しか増加せず、処理能力が増加しても廃水全体のわずか33.8%しか処理できませんでした。インド政府の報告に拠れば12次5カ年計画(2012-2017年)の中で都市及び工業用水と廃水処理に関し、廃水の問題の主要な原因として下水処理の計画性に欠陥があると指摘しています。
政府の報告では以下の様に要約されています。
・都市では上水道のみに関心があり下水道には注意が払われていない。
・多くの人口を抱えるインドが国として排泄物とその処理に関し責任ある対応をしていない。
・下水の取水と処理に関し適切な対応が取られているとは言い難い状況がある。
・インド国内のどの都市も下水処理体制が十分とは言えず、そのことが公衆衛生・汚染の問題を引き起こしている。
下水システム構築の為の資本が十分とは言えない状況下、現在の都市の下水は限られた範囲でしか出来上がっていません。小規模な都市では下水処理システムは言うに及ばず、下水の排水システムすら建設資金が有りません。
・下水プラントが電気料金や処理の化学薬品の値段が高かったり、プラントまで運ぶパイプラインが貧弱で下水がプラントまで届かないなどの理由で機能しない場合も有ります。
インドの排水処理部門への投資機会
廃水処理市場では民間セクターが市場の半分以上の実績を残しています。
廃水の量と廃水処理の量との差が膨大である為、廃水処理産業は収益性の高いものとなりました。インド内外の大会社、例えばDegremont, Doshilon, Driplex, Thermax, Va tech, Wahag, Veolia Waterなどがインドの水道、廃水処理市場で既に受注しています。Avalon Global Researchに拠ればインドの水道、廃水処理市場は大・中・小の三つのセクターに区分出来ます。20社以下の大企業が市場の30%を占めています。600社もの小体企業は市場の20%を受注しています。残る市場50%で200~250社の中規模の企業が活躍しています。インドの排水処理市場の金額規模は12億米ドルで同国の水道と併せた水処理市場の60%が廃水処理用です。廃水処理市場は更に住居(市場の3%)、商業(9%)、工業(55%)、地方公共団体(33%)に分けられます。
成長の牽引車
米国政府機関の予想では2030年までにインドの排水処理市場規模は32億5千万米ドルななるとされています。本プロジェクトに従い、シンシア・グループは以下の成長ドライバーを認識しています。
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インフラがまだまだ未整備であることと、廃水処理可能な水量が小さい事がインドの主要な水問題となっています。中・小規模の都市、Karnakata, Gujarat, Andhra Pradeshでは廃水処理施設の処理可能量が廃水量の12%未満となっています。高い率で未処理のまま流される廃水が公衆衛生上の問題を引き起こしたり、経済成長の妨げとなっています。インド政府は問題を無視しようとしているわけではなく国家的な課題と認識しています。
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インドの経済成長及び都市化に続いて発電、石油精製、製造業が起こるのは必然です。これらの産業が興った後には廃水処理の機械製造やサービスが生まれてきます。2010年にインド全体都市化率は30.9%でしたが、国連は2015年には32.8%、2025年には37.2%に増加すると予想しています。
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ユニセフはインドの一人当たりの有効水分量は今後40年で先細りとなるであろうと予想しています。2011年には一人当たりの有効水分量は1,545立方メートル/年でしたが2025年には1,340立方メートル/年、2050年には1,140立方メートル/年になるとされています。こういう状況の中で廃水のリサイクル、再利用が進んでいくでしょう。